パニック障害と過呼吸の知られざる関係とは?
目次
パニック障害と過呼吸(過換気症候群)の関係
「パニック障害」というキーワードと一緒に検索される言葉として最も多い言葉が「過呼吸」です。
「パニック障害 過呼吸」という形の検索です。
そのことからも推測できますが、どうやら「パニック障害と過呼吸」というのは切っても切れない関係にありそうです。
そして、それはズバリその通りなんです。
なぜなら、パニック障害の症状というのはすべて過呼吸から来ているからです。
「パニック障害のめまい・しびれ・ふらつき・発汗・胸部不快感などの症状はすべて過呼吸によってもたらされるものである<アレン・フランセス(2013)『正常を救え-精神医学を混乱させるDSM-5への警告』講談社>」
日本で精神疾患の診断の際によく使われるアメリカの診断基準(DSM)を作ったリーダーの精神科医アレン・フランセスもそう言っています。
何らかのきっかけ⇒過呼吸⇒パニック障害の症状という流れです。
過呼吸と過換気症候群の違いとは?
で、そのことを説明する前にまず過呼吸と過換気症候群の違いを説明しておきます。
似たようなもので関わり合いのない人にはどうでもいいことなんですが、僕らにとって「過呼吸」や「過換気症候群」というのは、大事な問題なのでしっかりと分けて理解しておきましょう。
まず両方共、何らかの理由で呼吸が上手くいかなくなり呼吸数が増えて体外に2酸化炭素が過剰に排出されます。
そうすると、血液中の2酸化炭素が減少してアルカリ性に傾きます。
専門用語では呼吸性アルカローシスというらしいです。
⇒クリックするとウィキペディアの呼吸性アルカローシスのページへ行きます
で、血液中で2酸化炭素が減ると酸素の運び屋であるヘモグロビンが、酸素を手放さなくなります(ヘモグロビンは”2酸化炭素”がいっぱいあるところで酸素を手放す奴です)。
そうなると酸素が細胞に行き渡らなくなるので、無意識の領域である延髄が呼吸を停止して血液中の2酸化炭素を増やそうとします。
でも、意識の方の大脳皮質は呼吸が停止することを当然異常と捉えるので、呼吸をさせます。
そうすると、血液中の2酸化炭素はますます減少してしまい、細胞にはますます酸素が届かなくなってしまうという仕組みです。
意識と無意識の連携が悪いですね。
過呼吸とは過剰に呼吸をしてしまうことですが、なぜ呼吸によって沢山の酸素を体内に取り入れるのに、苦しくなるのでしょうか。
これは以下のような理由によります。
血液中の酸素は、赤血球の成分であるヘモグロビンとくっついて、体の各部分まで運ばれます。各部の細胞では酸素を消費して二酸化炭素を排出しているので、二酸化炭素の濃度が高くなっています。そのような場所に行くと、ヘモグロビンは酸素を切り離して細胞に酸素を提供します。
しかし、呼吸しすぎると、二酸化炭素が過剰に体外に排出されてしまい、血液中の二酸化炭素の濃度が下がります。そうすると、酸素とヘモグロビンの粘着度が上昇して、ヘモグロビンは酸素を切り離さなくなる、すなわち、細胞に酸素が提供されなくなってしまうのです。
細胞に酸素が足りなくなると、体は呼吸を更に増やして、大量の酸素を取り込もうとします。しかしその結果、血液中の二酸化炭素の濃度がさらに下がって、ますます酸素が細胞に行かなくなるという、悪循環に陥ってしまうのです。
さらに悪いことには、二酸化炭素が少なくなると、体内がアルカリ性に傾きます。そうすると末梢にカルシウムが放出され、手足にしびれが来ます。これが過呼吸のメカニズムです。<磯部潮(2012)『パニック障害と過呼吸』幻冬舎新書>
で、「過呼吸」は陸上競技(長距離走・マラソン・駅伝)・水泳・サッカー・バスケットボールなどの呼吸を多く必要とする運動の後に起こるもので、前田敦子とかがコンサートの後でなったのは過呼吸です。
⇒こちらをクリックすると過呼吸のウィキペディアのページへ行きます
「過換気症候群」は精神的なものによって呼吸数が増えてなるものです。
ですから、我々がなるのは過換気症候群なので、今後は「過換気症候群」という言葉を使っていきます。
⇒こちらをクリックすると過換気症候群のウィキペディアのページへ行きます
パニック障害と過換気症候群の仕組み
それで、パニック障害の症状は過換気症候群からくるものと最初に言いましたが、それは次のような仕組みだと推測するからです。
何らかの刺激(健常であれば反応しないものがほとんど)があり、それに無意識が超敏感に反応して軽く交感神経が発動する。
交感神経が発動すると、呼吸数は増え、呼吸が浅くなる。
そして、「なんでこんな普通なとこで息苦しくなるんだよ」という思いがパニックを起こし興奮し、さらに交感神経を刺激してといういやなスパイラルに入っていくというものです。
何らかの刺激(過敏になっているため感じるもの)⇒普通は作動しないような場面で交感神経発動⇒パニック⇒さらに交感神経を刺激⇒さらにパニック・・・
ポイントは、普通は副交感神経(ゆっくり神経)が働くところで、交感神経が活発になってしまうことです。
パニック障害と原因やパニック障害と症状のところでも詳しく説明してますので良かったら参考にしてください。
パニック障害の人にはコーヒー(カフェイン)がダメとよく言われますが、カフェインは交感神経興奮様作用を示すからです。
交感神経が興奮したような状態になってしまい、それが発作へとつながってしまうということですね。
呼吸を鍛えて過換気症候群にならないようにする
どうでしょうか、パニック障害の症状は過換気症候群からくるという仮説に一票投じる気になりましたか?
まあ、たとえ信じられないとしても、過換気症候群とパニック障害が密接な関係にあるというのは動かせない事実です。
そうなると逆に、「過換気症候群」をなんとかできるようになれば、パニック障害の苦しみをだいぶ和らげることができると思いませんか?
そして、それは実現可能なことです。
「呼吸」を鍛えることによって「過換気症候群」になりにくくなることができるんです。
普段から「呼吸」の練習をたくさんすることによって、「呼吸」をコントロールすることができ、「呼吸」に自信がつけば「過換気症候群」は相当押さえ込むことができます。
具体的に言えば、「過換気症候群」の対処法が「長く息を吐く」というものですから、その練習をすると言うことになります。
「呼吸法」というのはあまり世間では注目されていませんが、医療従事者に「ひとつだけ効果的な健康法を挙げるとしたら?」という質問をすると、「呼吸法」という答えが多く返ってくるほど優れたものです。
呼吸法とは?
では、次はその呼吸法(ここでは丹田呼吸法の利点の一部)がどういったものかを説明します。
丹田呼吸法は「深い腹式呼吸」で行うので、「浅い胸式呼吸」を改めることができます。
「深い腹式呼吸」をしてたくさんの空気を吐く呼吸をすると自律神経の片方である副交感神経(まったり神経)が活発になり、落ち着くことができます。
逆に「浅い胸式呼吸」をいつもしていると交感神経(逃走・闘争神経とか言われる)が活発になりがちです。
「平常心」を求めるために禅僧が行っている「座禅」も、「深い腹式呼吸」である「丹田呼吸法」が用いられています。
現代日本人(若い女性が多い)は呼吸が浅い(胸式呼吸が多い)と言われていますので、特に訓練が必要でしょう。
若い女性にパニック障害が多いというのも呼吸の浅さと因果関係があるのかも知れません。
パニック障害の克服法として呼吸法は安上がり
僕は「座禅」から始めて、プール・ランニングなどとステップアップさせて「呼吸」を鍛えていき、呼吸を鍛えていきました。
「呼吸法」は少しのやる気と知識があれば無料(タダ)でパニック障害を”かなり”軽くすることができる裏技的なものです。
鍛えていけば薬の代わりになるものとも言えます(無料で精神が安定できます)。
「呼吸法」は見よう見まねで少しやってみれば効果は感じられるので、騙されたと思ってトレーニングしてみてください。
「呼吸なんてやったって、どうせ変わんないよ~」と思ってた僕が、今では毎朝座禅をして毎夜お風呂で呼吸法をしているのですから、間違いありません。
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