パニック障害と薬「どの薬が効くの? の前に知っておきたいこと・・」
目次
まず薬の基本をちょっとだけ
パニック障害と薬についてお話する前に「薬自体」について、ちょっとだけ話させてください。
日本では薬が安易かつ過剰に使われる傾向にあります。
なぜなら、薬は原価が安いので売るとものすごく儲かるからです。
それは、不況だ不況だと騒がれたこの20年で、ドラッグストアが街のいたるところにできた現状を見てもわかると思います。
しかし、薬は麻薬と親戚ですし、毒とも兄弟のようなものですから、実はかなり慎重に扱わなければならないものです。
くすりは元来、からだに入るべきものではありません。ですから、長くとどまっていると余計な作用を示すことが多いのです。
毒は薬になり得るけれど、薬も毒になり得る
<當瀬規嗣『よくわかる薬理学の基本と仕組み』(2008)秀和システム>
「麻薬及び向精神薬取締法」なんて法律もあって、向精神薬は麻薬と一緒に取り締まられているぐらいのものです。
薬は病気の時の症状を抑えるものであって病気を治すものではなく、病気を治すのは人間の持つ「自然治癒力」だけということをしっかり理解しておきましょう。
薬は少量短期間使って、自然治癒力を助けるものです。
パニック障害で薬物療法する?しない?
日本ではパニック障害の治療法として第一に選択されるのが薬物療法です。
これがベストなのかそうでないのかはわかりませんが、パニック障害として診断されると多くの人がまず薬物療法を行うか行わないかの選択を迫られます。
正確に言うと、ほぼその道(薬物療法)しか用意されていないのですが現状です。
そうなると、治療しようとする人は薬物療法になり、薬物療法をしない人は治療もしないということになりがちです。
そこで、大事なのは薬物療法(薬)についてよく知った上で、やるか、やらないかの判断をすることです。
自分で知る努力をせずに、なんとなく医者が言うからやってみよう、なんとなく怖そうだからやめてみようという適当な選択をすることが一番いけません。
自分の人生ですから、症状が酷くてしんどいとは言えできる限りのことはしましょう(`・ω・´)キリッ
この記事では、薬物療法に対する客観的な意見(各国の保健局の意見・論文・書籍などを参照)を集めて掲載していますので、参考にしてください(プラスして僕の意見がところどころ含まれています)。
どの薬が効くの?
僕は医者ではないのでどの薬が効果的かということはわかりません。
医者は数多くの患者に薬を投与して、その経過を見守ったデータを持っていますので、もし薬を飲むとなれば医者の意見を一番手として参考にするべきでしょう。
ただ、そこでも信頼できる医者なのかを見極める必要があるのは言うまでもありません。
副作用(SSRI)
概要(添付文書中に記載のある主なものを、承認時発生頻度順に列記。867例中15.0~1.3%)
嘔気(投与初期に出現、多くは2週間程度でおさまる)
傾眠(日中の倦怠感)
口渇
めまい
便秘
頭痛
食欲不振重大な副作用(発生頻度は1%未満または不詳)
セロトニン症候群(錯乱・発熱・発汗・震え・痙攣・ミオクローヌス)
悪性症候群(体の強い硬直・じっとして動かない・震え・意識がはっきりしない・発汗・高熱)
錯乱、幻覚、譫妄、痙攣
肝機能障害(黄疸)投薬中止時(特に突然の中断時)に以下の報告がある。
めまい
知覚障害
睡眠障害
激越
不安
嘔気
体の震え
発汗等(頭がシャンシャンする、耳鳴りなど)
うつの再来(揺り戻し)
これはウィキペディアのパキシル(パニック障害の第一選択薬とされているSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の中のひとつ)のページの副作用の部分の引用です。
⇒こちらをクリックするとウィキペディアのパキシルのページへ行きます
どうでしょうか、これらを見て何か感じましたか?
僕は非常に数が多いことと、しんどいものがけっこうあるな~と昔思いました。
効果(作用)を得るために、一体どれだけの副作用を我慢しなけりゃならんのだという話ですし、なんかほかの病気になりそうな気さえします。
僕がパキシルを飲んでた時は、深刻な副作用として上の引用にはありませんが、肥満と性欲減退というものがありました。
食べても食べても物足りなくなり、常に食べてるような状態で半年で13キロ増えました。
太るとパニック障害の症状も酷くなるし、生活の質も大幅に下がるので大変でした。
性欲減退が残念なのは言うまでもありませんね。
動物の本能が働かなくなるのですから、そりゃ元気もなくなります。
これだけ副作用があるSSRIですが、抗うつ薬としては副作用が少ない薬として売り出されたということも一応言っておきます。
薬を使う期間(ベンゾジアゼピン)
次は薬を飲み続ける期間のお話です。
薬の使用期間というと必ず出てくるのがベンゾジアゼピンに関するものです。
販売名で言うとメイラックス・ソラナックス・リーゼなどが有名なベンゾジアゼピン系のお薬です。
ベンゾジアゼピンは1950年代~1960年代にトランキライザー(精神安定剤)として販売されたのが始まりです。
しかし、すぐに乱用、自殺、依存性などが問題になると”抗不安薬”と名前を変えて生き延びます。
日本では長期間処方されることが多いですが(最近ようやく短期間投与に変わりそうな気配もあります。※注1参照 ちなみに僕は3年ぐらいメイラックスを飲んでました。)、英国では2~4週間以上の使用は英国国立医療技術評価機構(NICE)によって推奨されていません。
英国では特にベンゾジアゼピンの長期使用に対して批判的です。
その様子がわかるような文章を、ウィキペディアのベンゾジアゼピンのページから引用しておきます。
⇒こちらをクリックするとウィキペディアのベンゾジアゼピンのページへ行きます
特に英国では政治論争となっており、長期使用については1980年代と1990年代で最大の集団訴訟の対象となった。医療官僚による隠蔽の疑惑もある。
英国王立精神医師会(The Royal College of Psychiatrists)による1987年の報告書では、ベンゾジアゼピンの長期使用について、いかなる利益よりも、長期間の使用による危険のほうがはるかに上回っている可能性が高いことが報告された。しかしながら、ベンゾジアゼピンは依然として広く処方されている。
6ヶ月間のベンゾジアゼピンの断薬を続けた患者の多くが、深刻な不眠や不安から開放され、ストレスが減り、6ヵ月後の調査にて健康が向上したと答えている
冗談みたいな話ですが、ベンゾジアゼピン離脱クリニックなんてのが英国にはあるらしいですよ。
酒・タバコ・麻薬・ベンゾジアゼピンは並列なんでしょうか?
※注1
治療を開始した最初の2~3週間だけ抗不安薬のベンゾジアゼピン系薬を併用し、SSRIの効果が出るまでのバックアップとする方法が主に行われます。
こちらは東京大学医学教育国際協力研究センターの北村聖教授が監修した下記のページに記載されていた文章です。
薬の服用と体への影響(SSRI)
次は副作用のところでも出てきたSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の体への影響という問題を見てみます。
SSRIはニューロン(神経細胞)が枝分かれした先の神経終末(プレシナプス)と他のニューロン(ポストシナプス)が近づくところ(シナプス間隙)で、神経終末がセロトニンを再取り込みしないようにするお薬です。
セロトニンを再取り込みしないことによって、セロトニンを脳内にいっぱいにしようという目論見です。
この薬が多くの人に効くということは、もしかしたらパニック障害の人はセロトニンが不足した状態になっているのかもしれません(原因ではありません、詳しくはパニック障害と原因で説明しています)。
セロトニンの再取り込みを邪魔していいの?(僕の推測・感想を多分に含みます)
ただ仮にセロトニンが不足しているとしても、再取り込みを阻害していいのかという疑問は残ります。
動物に備わっている機能って信じられないぐらい長い期間(40億年?)を経て、必要なものだけ残っているわけですから、その機能を人間の浅知恵(たかだか数百年の科学知識)で勝手に遮っていいのかなと考えるわけです。
感情というのは、何らかの刺激を感じて「活動電位」ちゅーのが騒ぎ立て、それを軸索⇒神経終末⇒プレシナプス⇒ポストシナプスなんかに情報が伝わっていって『強く一瞬』感じられるものだと思うんです。
それが、脳の中には常にセロトニンがあるなんてことになったら、果たして『ずっと幸せ』なんて感じ続けるものなんでしょうか。
僕が薬を飲んだ感想としては「幸せ~」というよりも、「ボーッと」するという感じでした。
しかも、何年にも渡ってSSRIを服用する場合は、ずっと再取り込みを阻害し続けることになります。
薬で無理やりセロトニンを再利用し続けたら、セロトニンを供給している脳の縫線核くんは「セロトニンは足りてるんだな」と理解して、もともとのセロトニンの供給を少なくしてしまうかもしれません。
もしくは、セロトニンがずっと脳内にあることによって、セロトニンレセプター(受容体)が「もっとセロトニンを吸い込むぞ」となって数を増やしてしまうかも知れません。
これらは僕の単なる推測ですが、とにかく体の中の神秘的かつ芸術的な「流れ」を止めてしまうようなものを使い続けることはダメでしょう。
体の流れを止めてしまう便秘がいかに健康に、美容に悪いかを考えれば納得のいく話かと思われます。
製薬会社の存在
そして、ここまでも度々出てきていますが、薬と言えば製薬会社の存在なしには語れません。
うつ病が20世紀になって増加しているがSSRIの普及と軌を一にする。SSRIという薬価が高いうつ病の薬が販売されると世界各国で軒並みうつ病患者が増える。そこには製薬会社のキャンペーンが影響している。SSRIの導入後、6年間でうつ病の患者が2倍に増えるという経験則がある。
軽症のうつ病を説明する「心の風邪」というキャッチコピーは、1999年に明治製菓が同社のSSRIであるデプロメールのために最初に用い、特にパキシルを販売するためのグラクソスミスクラインによる強力なマーケティングで使用された
2012年、アメリカ司法省(Justice Department)は、GSKが子供向けにパキシルを販売促進したことを含めた罪状を認め、30億ドルの罰金を支払うことを公表した
これはパキシルとSSRIのウィキペディアのページから引用したものですが、製薬会社の薬を売るための強引なキャンペーンは最早誰もが知っていることです。
⇒こちらをクリックするとウィキペディアのパキシルのページへ行きます
⇒こちらをクリックするとウィキペディアのSSRIのページへ行きます
僕が発症した20年ぐらい前はネットも普及していなかったので、こんな情報を手に入れることもできませんでした。
日本の医療システムの問題(診療報酬制度)
日本の診療報酬システムは薬を処方しないと儲からないシステム(個人医院は経営していけない)になっているので、医者は薬を処方することが治療の前提になります。
診療報酬自体も安いので医者はてんてこまいで働かないといけないので、まともな診療もできません。
アメリカの5倍ぐらいの人数は診療しないと経営が維持できないそうです。
<参照:岡本 裕『9割の病気は自分で治せる』(2009)中経の文庫>
パニック障害においては、「疾患に対する医師の説明」が最も重要なので、そういった教育に対する報酬を高くするべきなんですが。
日本人は形のないものにお金を払わないので、そこら辺をうまく利用されて物=薬を売られているのかも知れませんね。
重度の患者さん・症状がひどい時には薬は必要
ただ重度の患者さん・症状がひどい時には、薬が効果的というのも実証されています。
問題は、あまりにも軽い症状なのに薬がすぐに、しかも長期にわたって処方されることです。
薬は毒にもなりうるのですから使われ方次第なのに、本来の「病気を治す」という目的以外の諸事情が多過ぎるのです。
これだけの事情を知った上で飲むかどうか
以上が、僕が「パニック障害と薬」ということを考えるときにひっかかる事柄です。
ひっかかりすぎて困ってしまいますが、何かと参考になれば嬉しいです。
最後に
僕の意見としては最初のヤバイ時期を除いて、なるべく頓服(ヤバくなった時だけ飲む)ぐらいにしておくのがいいのかな~なんて思ってます。
長期間服用した薬をやめるというのはけっこう大変なことですから。
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